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スキルスがんを内視鏡画像で見た写真、胃壁全体の硬化と膨隆、潰瘍部分からの出血を見ることができる。
スキルス胃がんの内視鏡画像(Wikipediaより)
特徴的な胃壁の硬化と膨隆を見る。
通常の胃癌のような火口型の潰瘍は認めない。

スキルスがんの主な病理像である印環細胞がんには、悪性度の強いがんと弱いがんの2種類がある。

スキルスがんの主な病理像である印環細胞がんには、悪性度の強いがんと弱いがんの2種類がある。

スキルスがんはその細胞の病理像が
印環細胞がんがほとんどであることから

「印環細胞がんと診断されればすなわちスキルスがんだ!」

と、判断してしまいがちですが、
印環細胞がんという診断でもおとなし目の癌はあります。

スキルスがん、スキルス性胃がんという場合には
レントゲンやCT撮影で胃壁に広範囲に広がったがん組織を
疑わせる画像が確認できる場合です。

つまりスキルスがん、スキルス性胃がんとは
ひとつの症候群のようなとらえ方をしてもいいかと思います。
細胞一個一個の顔は印環細胞がんであることがほとんどですが、
粘膜下層に広く進展したものをスキルスと呼ぶと思ってください。

もちろん、最終的な判断は摘出した組織で判定します。


さて、ではスキルス性の印環細胞がんと、
そうでない印環細胞がんの違いはどこにあるかということですが、
それを見分ける病理学診断についての論文を上げておきます。

症例の検討をしているだけですが、
何か名を上げてやろうという肩肘張った論文ではないので、
逆に信頼できるかと思います(失礼)。


World J Gastroenterol. 2007 Jun 21;13(23):3189-98.
Phenotypic classification of gastric signet ring cell carcinoma and its relationship with clinicopathologic parameters and prognosis.
Tian MM, Zhao AL, Li ZW, Li JY.

Department of Pathology, Peking University School of Oncology and Beijing Cancer Hospital, No.52. Fucheng Road, Haidian District, Beijing 100036, China. lijiyou@263.net.

AIM: To distinguish subtypes of gastric signet ring cell (SRC) carcinoma by investigating the expression of gastric and intestinal phenotypic markers, and to study the significance of phenotypic classification in predicting tumor progression and outcome. METHODS: Immunohistochemistry was performed in 66 cases of SRC carcinoma with MUC2, VILLIN, CDX2, Li-cadherin antibodies as intestinal phenotype markers and MUC5AC, HGM, MUC6 antibodies as gastric phenotype markers, and the relationship was analyzed between the phenotypic expression pattern and clinicopathologic parameters, as well as the 3-year survival rate. RESULTS: Expression of intestinal phenotypic markers was positively associated with tumor size, wall invasion, vascular invasion, lymph node metastasis and tumor-node-metastasis (TNM) stage. Cases expressing one or more intestinal markers had a significant lower survival rate than cases expressing none of the intestinal markers. CONCLUSION: The SRC carcinomas expressing intestinal phenotype markers exhibited a high pro-liferative potential, bad biological behaviors and poor prognosis. Examination of phenotype expression may be useful in distinguishing histological type and in predicting the prognosis of gastric SRC carcinoma.

抄録の翻訳は以下です。

胃の印環細胞がんの表現型別分類および、臨床病理学的パラメーターと予後との関係

北京大学病理学、北京大学腫瘍学、北京がんセンター 
Tian MM, Zhao AL, Li ZW, Li JY

目的: 胃型、または腸型の表現型マーカーの発現を調べることにより、胃の印環細胞(SRC)癌の「副タイプ」を区別・分類し、腫瘍進行と予後を予測する際の指標とできないかを研究した。
方法: 免疫組織学検査は66件の症例のSRC癌で実行されて、MUC2、VILLIN、CDX2、Li-カドヘリン抗体を腸の表現型マーカーとして、MUC5AC、HGM、MUC6抗体を胃の表現型マーカーとして使用した。印環細胞(SRC)癌表現型パターンと臨床病理学的パラメーター、それと3年生存率の間で比較した。
結果:  腸型の表現型マーカーの発現は明確に腫瘍の大きさ、胃壁への侵潤、血管の侵入、リンパ節転移、および腫瘍リンパ節転移(TNM)分類のステージ進行度に関連していた。腸型の表現型マーカーを発言する症例では生存率が低い傾向にあった。
結論: 腸型の表現型マーカーを表すSRC癌は高い増殖性と、そして、悪い性質と不良な予後を示した。 表現型の検査はSRC癌の組織学的なタイプを区別して、胃のSRC癌の予後を予測する際に役に立つかもしれない。


ということで、印環細胞がんには二種類あるようです。
悪性度の高いものとそれほどでもないもの。

印環細胞がんと診断されただけでは

「スキルス性胃がんなのか!」

と、あわてないこと。


それともうひとつ、ここでこういう紹介をしましたが、
すべての病院でこういう検査ができるわけではないことを
ご了承ください。

posted by すきるすがん at 21:07 | Comment(1) | TrackBack(0) | 日記

スキルスに限らず胃がんのX線診断は難しい

スキルスに限らず胃がんのX線診断は難しいのです。

日本は国立がんセンターの医師たちの努力により、
世界に先駆けてバリウム二重造影法というX線撮影方法を編み出し、
胃がんの早期発見をレントゲンで行うことにかけてはおそらく、
世界最高の医療技術を持っています。

その日本であっても、見落としは起こったようです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070704-00000105-yom-soci
胃がん発見遅れ患者死亡、4130万賠償命令…名古屋地裁
7月4日14時48分配信 読売新聞


 胃がんで2002年に死亡した名古屋市内の男性(当時51歳)の娘2人が、医師の診断ミスでがんの発見が遅れたとして、「サクラクリニック」(名古屋市天白区)の医師(45)に対し、計約8990万円の賠償を求めた訴訟の判決が4日、名古屋地裁であった。

 永野圧彦裁判長は、「胃がんの疑いがあったのに、精密検査を受けさせなかった過失がある」と述べ、計約4130万円の賠償を命じた。


結局、これは医療技術とか、そういう問題ではなくて、
その診断に携わった医師の注意力の問題です。

どんな人間にも完璧は期待できません。
外科医も放射線科医も同様です。
でも、であるからこそ複数体制で、
お互いがお互いの見落としを防ぐ方向でがんばりたい。

何よりも命に関わる問題なのだから。


なくなった方には大変お気の毒と申し上げるしかありません。
このことが今後の医療体制の更なる引き締めをはかる
気付け薬になればと思います。

正直なところ、勤務医の現場は疲弊の極にはまっていますので、
これ以上の集中力の持続の強制は安易に申し上げられないのですが、
国の医療体制が改善するまでは今の陣容でがんばるしかない。

なおいっそうの努力を。
外科医たち、がんばれ!
posted by すきるすがん at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

スキルス胃がん(印環細胞がん)のはじまり

スキルス胃がん(印環細胞がん)のはじまり

スキルス胃がんのはじまりのサイン、自覚症状はさまざまです。
基本はなんだか胃の調子が変、という程度。

スキルス胃がんは印環細胞がんともいわれる組織像のがんで、
これは細胞内に粘液を多数含むので
指輪のような病理像に見えることから
そのような名前(印環細胞)がついたものですが、

これがなんとも性質が悪いのです。
医者からは
「顔つきの悪いがん」
という言われ方をよくします。

本来、胃がんは胃の粘膜上皮の一部に出現し、
最初のうちは粘膜のシートの中にじっとしています。
じわじわ増えたりもするのですが、
早期胃がんは5〜6年は粘膜の中でおとなしくしているといわれます。

ところがスキルス胃がんの原因である
この印環細胞がんは、早い段階から粘膜の外で増えます。

これが粘膜から転び出たもの(いわゆる転移)なのか、
最初から粘膜下層で増殖するものなのかはわかりませんが、

この印環細胞がんの特徴は、
粘膜下層のあちこちで一斉に増えてしまうことです。

通常の上皮がんは転移を起こすにしても
胃粘膜の一部からその外へ向かうのに対して、
印環細胞がんは、気がついた時には粘膜下層にたくさん分布しています。

このことから、早期発見というのが非常に難しいのです。

また、このことは臨床症状も出にくくします。
通常の胃がんであればがんからの出血や、粘膜破たんによる痛みで
がんであることがわかるのですが、
スキルス胃がんの場合は粘膜の下で事が進んでしまうので
出血などが起こりにくいのです。



それでも、スキルス胃がんが増殖した部分の胃壁は固くなり、
独特の外見を呈すること、そこに胃潰瘍ができやすいことなどから、
熟練した外科医であれば胃カメラ
(ファイバースコープ)で発見できます。

また、胃潰瘍からの出血もありうるので、
吐血したり、血便が出たりもします。

ただ、繰り返しになりますが、
そのような症状が出た時にはどうしてももう、進行しています。

スキルス胃がんの場合、胃を全的できたとしても
5年生存率は20%です。
広範囲切除といって、胃のそばのほかの臓器を取ってしまえば40%。
進行していて手術不能であれば2%程度です。



早期発見には、積極的に検診を受けるしかないのですが、
何度も書いていますが、毎年とは言わず、
2年に1回程度PET+CT検査を受けるのが効果的です。

内視鏡やX線検査では発見できない段階の早期胃がんを発見できます。
粘膜下層で静かに一斉に増えるスキルス胃がんに対しては
最強の検査方法でしょう。


近藤誠さんという放射線科の先生が
「患者よ、がんと闘うな」
という本の中で早期胃がんは治療の必要はない、
自然に治るとおっしゃってますが、
文芸春秋も特集を何度も組んでいますが、

胃がん克服には早期発見に勝る方法はないというのが、
他の99.9%以上の医師の見解だと思いますよ(笑)。
posted by すきるすがん at 01:53 | Comment(9) | TrackBack(0) | 日記

スキルス性胃がんになりやすい人

スキルス性胃がんになりやすい人

スキルス性胃がんは比較的若い女性に発症しやすいとされている。
実際に、20代から40代の女性での発症率は他の年代のそれをしのいでいる。

キャスターでありタレントの逸見政孝さんが
スキルス胃がんで亡くなったのは
今から14年前の1993年2月のこと。
その前の年にスキルス胃がんの手術を受け、
闘病生活むなしく帰らぬ人となった。48歳だった。


そのころにはTS-1などの抗がん剤がなかったので、もしも今であれば、
もう少しは楽な闘病生活を遅れたかもしれない。

逸見さんの場合、家族の方に消化器がんが多いからということで
がん検診を頻繁に受けていたのに、スキルス胃がんの発見は遅れた。。。


内視鏡での診断は通常であればレントゲン透視よりも効果的に初期がんを発見する。しかし、スキルスの場合は逆に経験のある医者でないと見つけにくくなる。むしろ古典的なバリウム造影のレントゲンの方がよくわかることが多い。

そういう不幸も重なったのだと思うが、それにしても進行が早かった。


さて、同様な有名人で最近になってスキルス胃がんで亡くなった方に
巨大な頭、というかヘアスタイルで有名だった塩沢ときさんがいる。

彼女がなくなったのは2007年5月、ごく最近のことで、
79歳だった。
女性の平均寿命よりは短いが、
彼女は逸見さんよりは長いこと人生を謳歌できたかもしれない。
とはいうものの、がんで死ぬのは何歳であろうと本意ではないだろうが。


さて、塩沢ときさんの場合も、がんとの付き合いは、
というかがんに対する注意は人一倍払っていたはずである。

彼女は30歳で舌癌を発症している。
その後、乳がんを右の乳房に発症して切除し、
さらに数年後に左の胸にも乳がんを発症して切除している。

そして、今回のスキルス性胃がん。
血便で気が付いた、手術むなしく直後に肺に転移したということで、
その再発が今回の死因とされる。


本来、できればおそらく毎年受けていたであろう健康診断で
早期発見してほしかったのかもしれないが、
彼女の場合も神様はそのチャンスをくれなかった。




スキルス胃がんはそのように恐ろしいスピードで進行するのだが、
逸見さんと塩沢さん、この二人に共通することにお気づきだろうか?

家族で消化器がんが多発。
本人が何度もがんを多発。

そう、つまり彼らの遺伝子にはがんが出やすい配列があると思われるのである。


ということはつまり、
家族に消化器系のがんが多発している場合、
あなたの場合はスキルス胃がんの発症頻度は
家族にがんがまったくいない人よりは高くなるので、
内視鏡とレントゲン検査を毎年受けるほうが確実ではある。

もうひとつ確実なのはCT検査とPET検査を受けること。
これであれば内視鏡やレントゲンでは見落とすレベルの
初期のスキルス性胃がんも発見することができる。

費用が少々高いのが問題だが、
PETによる検診は最も確実な早期がん発見方法だろう。



さて、遺伝子の話に戻ろう。
詳細については別の記事に書くが、

残念ながら今のところ、どのような遺伝子変異が、
一塩基多型がスキルス胃がん発症に関連するかのデータはないが、
現在、国を挙げてそういうゲノム情報を集めている段階である。

やがてそれがわかれば、
スキルス胃がんが起こりやすい遺伝子の人に関しては
スキルスを念頭に置いた検査が行われるようになるだろう。

そうすれば生存率は今よりは高くなるものと思われる。
posted by すきるすがん at 15:19 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

スキルスがんは性質の悪い胃がんです。

スキルスがんは性質の悪い胃がんです。

胃がんはそもそもどこからできるのでしょうか?
胃の内側は粘膜で覆われ、外側は漿膜で覆われています。
その間に胃を動かす筋肉の層があります。

この3つの層の間には細胞が少なく繊維が多い組織があります。
つまり胃の壁は内側から、
粘膜,粘膜下層,固有筋層,漿膜下層,漿膜
の5層から成り立っているわけです。

胃がんは胃の粘膜から発生してきます。
胃にはそのほか肉腫や悪性リンパ腫なども出来てきますが、
胃の悪性腫瘍の大多数(95パーセント以上)は
「粘膜上皮がん」によって占められています。

胃がんはどれぐらい発生しているのでしょうか。
厚生省の統計によれば、
全国で男性66,440名,女性34,402名が胃がんに罹っていて、
あらゆる悪性腫瘍のなかで男女ともトップになっています。

この胃がんの中でも、細かく見ていくと悪性度が異なります。
この中でぜんぜん違うタイプで悪性度も高いのが
スキルス胃がんなのです。

スキルス胃がんといえば、ニュースキャスターの逸見政孝さんが
スキルス胃がんにかかったことを宣言し、
壮烈な闘病生活の上になくなられました。

胃を含めて大きな切除術を行い、
最後は相当くるしかったことと思います。

あのとき、医療者の間では意見が分かれていました。
切除すべきだという人はどちらかといえば少数派でした。

スキルス胃がんに対しては放射線療法と抗がん剤を使い、
スキルス胃がんを少しずつだましながら
QOLの高い生活で死ぬまでを充実させたほうが・・・。

そういう意見が多かった気がします。
それほど怖い胃がんなのです、スキルス胃がんは。


スキルス胃がんは、通常の胃がんが胃の内腔に突き出すのに反して、
胃の5層の壁の間を横に走ります。
粘膜層、粘膜下層をどんどん広がって、
やがては筋肉層や漿膜下層、漿膜にも広がります。

それで、症状が出たころにはかなり広がってしまっているのです。
さらに増殖スピードが速いのです。

増殖スピードが速いがんは、放射線療法や抗がん剤などの治療に反応しやすいのですが、完全にたたくのは難しいです。
でも、広がってしまった場合は、
手術よりはたたきやすいといえるでしょう。

スキルス胃がんはその点で、手術の選択肢はない場合が多いです。
もっとも、手の内ようがないことも多々ありますが。



posted by すきるすがん at 01:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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