スポンサーリンク



スキルスがんを内視鏡画像で見た写真、胃壁全体の硬化と膨隆、潰瘍部分からの出血を見ることができる。
スキルス胃がんの内視鏡画像(Wikipediaより)
特徴的な胃壁の硬化と膨隆を見る。
通常の胃癌のような火口型の潰瘍は認めない。

スキルス胃がんの腹膜播種に効果的な化学療法

スキルス胃がんの腹膜播種に効果的な化学療法

スキルス胃がんを含む胃癌腹膜播種を伴う症例に対する
化学療法治療のトライアルが東京大学病院で行われ、
比較的よい成績を上げています。


スキルス胃がんの場合、進行が非常に早いために
発見していた時には胃全体に広がるどころか、
胃の表面の膜を飛び越えてこぼれおちたがん細胞が
おなか全体に広がっていることがあります。
これを腹膜播種と言います。

腹膜播種は読んで字のごとくに、おなかの中に接した腹膜の
あちこちに小さながんが無数に散らばって増殖している状態です。

最近でこそそのような状態なのかどうかをPETなどで
事前に観察できますが、以前は手術でおなかを開くまで
小さなたくさんの腹膜播種はわかりませんでした。

外科医がおなかを開けてみれば無数の播種。
外科的にすべてを取り除くことは不可能です。
外科医自身もがっくりして閉じて出てきたものです。



胃がんの末期にはこの腹膜播種になることが多いのです。
スキルス胃癌はもちろんのことです。

何とか抗がん剤が奏功することを期待して化学療法を試みていました。
しかし20世紀末ごろまで、有効な抗がん剤処方が少なく、
腹膜播種発見から1年以上生きる症例は少なかったのです。


東京大学の外科において、
胃がんの腹膜播種に標的を定めた化学療法がおこなわれています。

これは日本において開発されて、
画期的な抗がん剤の誕生だと言われたTS-1と、
卵巣がんなどに対して開発されたパクリタキセルを
組み合わせたものです。
これらを、腹腔内投与します。

この方法の優れている点はいくつかあります。

まず、抗がん剤の組み合わせですが、
TS-1という抗がん剤は昔から日本で使われていた
5FU系の抗がん剤であるテガフールを、他の薬剤との組み合わせで
長時間効果が持続するように工夫したものです。

テガフールなどの5FU製剤はもともと副作用が少なく、
経口投与でも効果を発揮することから
日本では胃がんなどの多くのがん患者の
外来治療に好んでつかわれていました。

抗がん剤としての効果は薄いことから
気休めの抗がん剤などといわれていました。
「副作用の弱さと効果の無さは比例する」
代表例のようにも厳しく評価されていました。

ですがこの薬理効果を複数の薬の組み合わせで持続させることで
効果を引き出すことに成功したのがTS-1です。

この薬は幸いなことに胃がんに対する奏功率が高く、
スキルス胃がんなどの術前投与にもよく用いられます。
経口投与もありますが、ポンプを設置して持続注入も行います。

胃がんに対する本当に有効な抗がん剤として
世界中で使われている唯一のとも言ってよい抗がん剤です。


一方、タキソールですが、これはもともと、
アメリカで乳がん、子宮体がんや卵巣がんへの
効果を狙って開発された抗がん剤です。

単独では胃がんへの効果はやや弱いのですが、
これをTS-1と組み合わせるとそれぞれの効果が相乗的に作用します。
そこで、これら2剤を組み合わせた療法をしようというわけです。

TS-1との組み合わせで奏功率が高いものにはシスプラチンがあります。
シスプラチンCDDPはさまざまながんに非常に効果的なのですが、
問題は副作用の強さです。

吐き気などの神経症状の強さに加えて腎毒性が強く、
輸液コントロールなどをきちんとしないと
副作用で腎不全ということになってしまいますので
入院して集中投与ということになります。

ですが、パクリタキセルとTS-1の組み合わせは
シスプラチンとTS−1に比べれば副作用がマイルドで、
うまくコントロールすれば外来での治療も可能です。

腹膜播種の患者さんは申し訳ないのですが、
胃がんのステージでいえば末期とみなされます。
余命を考えると、入院してシスプラチンを使った集中治療よりも
副作用のマイルドな治療でQOLの確保を目指すのが
今の医療の在り方です。

そのこともあってTS-1 とパクリタキセルの治療が
腹膜播種の化学療法として選ばれました。


これらの組み合わせの効果を高めたのが
皮下ポンプ設置による腹腔内持続投与方法です。

腹腔内投与は腹膜播種したがんの表面に
直接高濃度で接することで
抗がん剤の効果を存分に発揮します。

腹膜播種のがん細胞は小さいので血管もまだ十分に届いていなくて、
静脈からの点滴では薬が十分に届かないこともありますが、
腹腔内に直接放り込めば小さな播種にも薬が届きます。

タキソールに関しては腹腔内投与が劇的に効果的で、
腹水中の濃度は静脈注射の10倍から100倍、
そして全身への副作用は少ないことがわかりました。


さて、実際にどの程度効果的かということは、

東京大学の胃癌腹膜播種に対する化学療法のページをご覧ください。

このページから一部抜粋しますと、


従来の全身的な抗癌剤治療に腹腔内化学療法を 加えるこの方法は、
これまでの60例の経験では腹膜播種だけでなく
転移リンパ節や胃癌の原発巣にも高い効果が認められています。
また、全身に対する副作用 が比較的少ないため外来通院で実施可能で、
患者さんのクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を
維持することができると考えています。

今回、私たちは腹腔内化学療法の安全性と有効性を厳密に確かめるために
臨床試験
「進行再発胃癌に対するS-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法の
安全性および有効性に関する第 I/II 相臨床試験」
を開始しました。

対象となるのは次のような患者さんです。
(1)胃癌の術前検査で腹水あるいは腹膜播種が判明したため胃切除を行っていない方
(2)手術によって腹膜播種が発見された、あるいは洗浄細胞診陽性であったため胃切除が行われなかった方
(3)スキルス胃癌と診断された方
(4)胃癌が大きいため腹膜播種を生じている可能性のある方
(5)胃の主病巣や転移リンパ節が大きいため完全切除が困難と考えられる方

肝転移や肺転移などの臓器転移のある患者さんは対象に含まれません。
また、既に胃を切除された方や他の抗癌剤治療を受けていらっしゃる場合も
対象になりません。

(注)第 I 相試験は終了しました。
現在まで60人の患者さんに腹腔内化学療法を行い、
短期の安全性に問題のないことを確認しました。
現在、引き続き第 II 相試験を行っていますが、
奏功した患者さんに対しては腹腔鏡検査を行い、
腹膜播種が消失していれば肉眼的根治を目指した胃切除を行っています。


ということでした。

劇的に効果があったスキルス胃癌の卵巣転移例についても報告が載っています。

第T相試験は終了したということですが、
メールアドレスなども掲載されていますので問い合わせてみてください。
試験治療に参加する場合、国から研究費が出ますので、
治療費もある程度安く抑えることができるケースが多いものです。
(すべてそうであるとは限りません。)

もしも試験募集が終わっていた場合、

なにも必ず東京大学病院に行かなくても、
もしもあなたが主治医とよい関係を結んでいれば
このホームページの情報を提示して、
東京大学病院のこの試験治療の先生にもメールで問い合わせてもらって
現在通っている病院で治療が受けられる可能性もあります。

保険が適用されない治療法の場合は自費診療になり、
費用も莫大なものになる可能性はありますが、
残りの人生を充実して過ごすために
主治医と相談してみる価値はあります。
(主治医、病院の方針などケースバイケースです。)

この方法で完治する症例があるかどうかはまだ不明ですが、
腹膜播種が消失して2年経過して元気という症例もあるようです。

スキルスがんとの闘いのひとつの効果的戦術になりうると思われます。

posted by すきるすがん at 18:21 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
こんにちは、初めまして、ホームページを見させて頂きましてご連絡させて頂きました。私の兄が進行の胃がんで、ステージ4の4で、大腸、リンパ、肝臓に転移ありの患者です。現在人工肛門を使用しております。大阪の警察病院で去年から治療中で、抗がん剤もしていたのに、治療中の中、転移が有り、8月から入院中です、医者からは余命を告げられ、現在見放された状態です。本人、家族が大変ショックを受けております。本人はセカンドオピニオンで大阪の成人病センターに依頼しておりますが、受け入れて頂けるかも分かりません。家族ととしては、どうにか治って欲しいので、色々と調べてる状態です、こんな状態でも少しでも長生きして欲しいので、縋る思いで、メールさせて頂きました。まだ49歳と若いので、こんな状態ですが、何か治療方法が有ったら宜しくお願い致します。少しでも1日でも生きれるので有れば何とかしてあげたいので、宜しくお願い致します。
Posted by 河内 慶子 at 2011年11月10日 17:01
こんばんは、コメントに気が付くのが遅くなりました。

 書いてくださった進行状況からすると確かに大変厳しい状況だと思います。人工肛門をつけていらっしゃるということから転移巣もかなり大きく、広く浸潤していたのだと思われますし。

 抗がん剤治療に反応しなくなったということですが、どんな組織型なのか、そして何通りぐらいの組み合わせで試して見られたのか、それをきちんと把握した上で、こちらで相談されてみてはいかがでしょうか?

 がんのWeb相談室
http://2nd-opinion.fast-corp.jp/

 サイト責任者の平岩正樹先生は効かなくなったと思われていた抗がん剤をさまざまに組み合わせ直すことでまた効果が見いだせるということを示してくださった方です。
 
 もちろん、一人ひとり、病気の強さも本人の健康状態も異なりますので、すべての人に効果的な治療方法というものはありません。でも、もはやそんな抗がん剤は効かないだろうと思っていたものが組み合わせや投与量を変えることで効く場合もあります。

 お兄さんのこれまでの治療経過や現在の体調がどうなのかで抗がん剤治療が受けられそうかどうかはわかりませんが、相談を受けることができれば、もしかして道があるかもしれません。

 私自身はお役にたてませんで申し訳ありません。


Posted by 管理人 at 2011年11月12日 01:48
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/54063649

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。